1991年にリリースされ、シューゲイザーの金字塔を打ち立てたMy Bloody Valentineの2ndアルバム『Loveless』。2021年で30周年を迎える本作を記念し、弊メディアでは「My Best Shoegaze」と題した特集記事を不定期で連載する。SNS上の音楽フリークやライター、さらにはアーティストに至るまで、様々なシューゲイズ・リスナーに各々の思い入れの強い作品を紹介していただく。
Vol.13は、シューゲイザー・バンド、Optloquat(オプトロカ)のギターや、ヘクトーよるをまもるのメンバーとしても活動する、うぃるの5枚。
■ Ride – Nowhere(1990)
Label – Creation Records
Release – 1990/10/15
シューゲイザーの原体験アルバム。高校生の頃、UKのバンドを聴くようになった流れで知りました。バンド・サウンドにおける浮遊感がこれほど心地良いものか…。衝撃。「ギター・サウンド=カッコいい」だったのが「陶酔」できることも知った瞬間でした。リヴァーブやディレイに留まらず、フェイザー、トレモロ、ワウ、12弦ギターの音色はどれも新鮮で、エフェクターに興味を持つきっかけにもなっています。シューゲイザーの花形はギターになりがちですが、Rideのリズム・セクションの良さはギタリストの自分でもひしひしと感じます。ドラムはパワフルでエモーショナル、ベースはMUSICMAN Stingrayのアクティブ・ベースゆえか芯があってしっかりとした存在感。いつまでも自分のお手本と言える一枚です。
■ Ringo Deathstarr – Sparkler(2009)
Label – Vinyl Junkie Recordings
Release – 2009/11/04
1991年生まれの自分が、現行のバンドを見つけていく中で出会ったとっておきの盤。これぞシューゲイザー!といったギターのレイヤリングの中で、エリオットのヴォーカルはThe Jesus & Mary Chainのような色気を放ち、そこにアレックスの可憐なヴォーカルが加わり非常に濃密です。「SWIRLY」のイントロで既に心掴まれてしまう。「STARRSHA」以降の序盤は疾走感に満ちた煌びやかな雰囲気、「SUMMERTIME」「YOUR TOWN」など後半は陽炎のように揺らめき、真夏の炎天下で飲むサイダーみたいなアルバムだなと思います。実はシューゲイザー・バンドのライブを観たのは彼らの来日公演(2012年)が初めてで、その後も一番観に行っている海外のバンドです。いつか対バンできたら嬉しいなぁ!
■ DIIV – Deceiver(2019)
Label – Captured Tracks
Release – 2019/10/04
2020年で一番聴いたアルバム。実は前2作をすっとばして本作から入ったのですが、ヒリついた世界観、ぶん殴るような轟音に一発でノックアウトされました。良質なファズやフィードバックを満遍なく摂取できる盤です。今年プレーヤーを買ったので、家ではレコードを回して聴いています。とにかく音像が大好きです。メタルやグランジのヘビーさ、ポストパンクの冷たさやダークネス。Optloquatの『From the shallow』レコーディング時に聴いていたこともあり、歪みの質感やリフの幽玄さ、揺らぎ具合など、自身のギター・ワークにおいて影響を受けました。本盤を引っ提げての来日公演は、すぐさまチケットを確保したものの中止になり落胆しました。いつか来てくれることを願っています。
■ Alcest – Souvenirs D’un Autre Monde(2007)
Label – Prophecy Productions
Release – 2007/08/08
ブラックメタル×シューゲイザーの出会いはこの盤でした。フロントマンのNeigeが幼少期より夢見てきた空想世界がコンセプトになっているようで、タイトルはフランス語で「別世界の追慕」の意。繊細で優しいヴォーカルもフランス語で歌われており、高校生の自分にはそれだけで異世界のメロディに聴こえてきました。同じタイミングで聴いていたSigur Rós(造語であるホープランド語での歌唱)にも通ずる幻想的な魅力があると思います。ドライで重厚感のあるディストーション・ギター、手数の多いドラムなどが随所に入ってきますが、しなやかなアコースティックの音色、リヴァーブ深めのアルペジオ・リフなどと合わさり神聖なものになっています。
■ The Fauns – The Fauns(2009)
Label – Laser Ghost Recordings
Release – 2009/06/12
イギリス・ブリストル出身のバンド。ノイズ成分は少なく、リヴァーブが重なって女性ヴォーカルが揺蕩う。圧で聴かせるというよりシルキーな印象です。またエレクトロ要素の入り方が良いバランスだと思います。アートワークの美しさ、1曲目「Lovestruck」のMVもキュートかつ綺麗でオススメ。イギリスのバンドですが、北欧のように澄んだ空気を感じるアルバムです。所謂ニューゲイザーと言われていたような2000年代中頃のシーンで、エレクトロに接近したバンド(Letting Up Despite Great FaultsやGuitar『Sunkissed』など)も好きですが、このアルバムの優しく柔和な雰囲気が自分の中で特別でした。特に好きな曲は6曲目「Road Meets the Sky」です。
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文=うぃる(Optloquat)
編集=對馬拓
Release
■ Optloquat – From the shallow
Label – DELTAHEDRON
Release – 2021/07/07