文=對馬拓
福岡を拠点に活動するシューゲイザー・バンド、クレナズムが4月29日に新曲「エピローグまで」をデジタル・リリースした。
繊細かつアグレッシヴなパフォーマンスを持ち味に全国のサーキット・イベントなどへの出演を果たし、ラジオ番組でも楽曲が取り上げられるなど、徐々にその知名度を上げてきたクレナズム。2019年末には満を持して2ndミニアルバム『In your fragrance』をリリースし、初の全国ツアーを敢行。その後出演した台湾のフェス「意識不能招待所」ではヘッドライナーに抜擢されるなど、充実した活動を展開してきた。そんな彼女たちが、コロナ禍を通して感じた「痛み」を形にした楽曲が「エピローグまで」である。
元々は萌映(Vo. G.)の弾き語りだったものをバンド・サウンドに落とし込んだという本作。クレナズム特有の「シューゲイザーとJ-POPの邂逅」と言うべきサウンドはそのままに、時代とリアルタイムで共鳴する言葉が並ぶ。
「もしも」「たとえば」
- エピローグまで
そんな話ばかりだけど
僕を 見つめる
夢うつつなあなたが嫌いよ
萌映が紡ぐメッセージは時に鋭利だが、そこにはあっという間に変わってしまった世界への深い悲しみが横たわっているように感じる。そして、その鋭さは誰かを傷つけるためのものではなく、美しい旋律とヴォーカルと共に身体へと刺さり、心の奥底へと静かに入り込んでいくためのものだ。彼女は「痛み」を共有しようとしている。それは避けて通ることはできないだろう。しかし、やがて「痛み」の種は、この一節で凛とした花を咲かせる。
きっと この物語の終わりに 向かっている毎日は あなたが幸せの理由
- エピローグまで
失われた日常を誰よりも嘆き、だからこそ幸せを願う。そんな言葉たちが、リバーブの効いた繊細なシューゲイザー・サウンドと共に届けられることで、この楽曲は最大限の効力を発揮する。アフターコロナ(=エピローグ)への切実な「祈り」であり、そこに留まらず、忘れてしまいがちな「本当に大切なもの」を様々な場面で思い出させてくれる確かな力強さに溢れた楽曲だ。
なお、「エピローグまで」のMVは5月13日に公開予定。前述した台湾でのライヴに密着したドキュメンタリー・テイストの作品となっている。
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■ MV
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