■ 中学と高校で合唱部に入ってて、当時は聖歌とかを歌ってたんですよ
── もう少しサウンド面についてお伺いします。僕自身は正直なところ、クロゴメさんの影響源である80〜90年代のネオアコやギター・ポップに造詣が深いわけではなくて。ただ、元Sunnycharのクロゴメさんやツチヤさんがいらっしゃることで、シューゲイザーは好きだけどギター・ポップはあまり詳しくないリスナーがそれを知るきっかけになるというか、そういう部分でもFerri-Chromeが掲げている「90年代と今を繋ぐ」というコンセプトを体現しているのかな、という印象があります。
クロゴメ:僕は80年代後半〜90年代のギター・ポップを聴いて育ってきたので、身体の中に染み付いてるというか、もう根幹になってる部分があるんですよね。もちろん、その中の一部にRideとかPale Saintsも入ってきますけれども。
Manabu Kurogome(Vo. Ba.)
クロゴメ:今回のアルバムは前回みたいなシューゲイザー然とした曲というよりは、その要素を入れつつThe Stone Rosesから始まったようなギター・ポップ寄りの曲が多くなってます。なので、特に意図はしてないですけど、僕が通過してきたバンドを今の若い方たちにも遡って聴いてもらえるきっかけになれば、それは嬉しいですね。
── 少なくとも僕自身としては、現にそういう風になってます。
クロゴメ:ありがとうございます。今は昔の曲も簡単に聴ける時代ですし、知らない方には是非聴いてほしいと思いますね。80年代後半のキラキラしたギター・ポップ──Close LobstersやEast Villageだったり、あと僕は特にMcCarthyが好きで、その辺にすごく影響を受けてるので。
── 前作もそうでしたが、TESTCARD RECORDSからリリースされてるっていうのも、そうした新しい入口になってますよね。ギター・ポップ系で言うとKUNG-FU GIRLが新作『Sunset Park』を出してますし。
クロゴメ:嬉しいです。Ferri-Chromeはよく「シューゲイザー」の括りで紹介されてるんですけど、さっき言った通りギター・ポップの要素も強いので、KUNG-FU GIRLと共演しても全然違和感がないと思いますね。
── 今作からエウレカさんがレコーディングに参加していますが、制作面でどういった部分に変化があったのか、もう少し具体的にお聞きしたいです。
クロゴメ:進め方としては、僕がギターとヴォーカルだけのデモを録って、アナログなんですけど手書きで書いたコード表を写真に撮って(デモと一緒に)メンバーに送って、そこからスタジオで合わせながら作り上げていく、という形式を取っているんですけど、エウレカさんは本当に色々考えてきてくれるんですよ。特にコーラスなんかは、こちらが全然想像していなかったものを入れてくれたりして、「お、良いじゃん!」と思ったり。「At 7th Floor」って曲の「Ah〜」って歌うところがあるんですけど、あれがものすごく映えてまして。
一同:笑
エウレカ:映えてる。笑
クロゴメ:そういう化学反応があるのはすごく嬉しいですね。
── エウレカさん的には、そうした部分でフォトハイの経験が活きてたりはするのでしょうか? フォトハイはデモの段階で作り込まれてる、という話ではありましたが。
エウレカ:正直コーラスとかに関しても、フォトハイでは夏botがかなり作り込んでくるんですよ。「コーラス1」「コーラス2」「コーラス3」みたいな感じで、全部デモに録って「これを歌ってね」っていうのが送られてくるので。
クロゴメ:3つも。すごいな。笑
エウレカ:なので、(フォトハイと)通じてるかっていうと、あんまりそこからくるものはないような気がしていて。私、中学と高校で合唱部に入ってて、当時は聖歌とかを歌ってたんですよ。そういう中でコーラスをやることで、「こういうのが綺麗だな」っていう感覚が分かるようになったのかもしれないです。
── なるほど。合唱の経験がコーラスに活きてると思うと腑に落ちる気がしますね。
エウレカ:もし(コーラスが)良いって思ってくださるなら、そういうことなのかもしれないですね。
Eureka(Gt. Cho.)
クロゴメ:ギターに関しても、エウレカさんはそんなに経験は深くはないんですけど、非常に頑張ってくれてるんだなって感じが伝わってきて。
エウレカ:笑
クロゴメ:カッティングというか、跳ねたリズムも全然問題なく弾けるし、音作りも考えてくれるし、素晴らしいなと。…すげえ褒めてるな?!笑
エウレカ:ありがとうございます!笑 音作りについても、ちょっと違うと思ったらクロゴメさんが絶対に指摘してくれるので、安心して色々チャレンジできてると思います。自分で勝手に「ここでファズ踏もう」ってやっても、あとで怒られたら変えればいいかな、みたいな。笑
一同:笑
クロゴメ:全然それで良い。笑 基本的に全部(メンバーに)投げるんですよ。でも、僕にも曲全体のイメージがあるので、そこから外れる感じだったら「ここは変えて」って言ってます。
── とても良い環境ですね。制作の仕方がフォトハイとは全然違うので、エウレカさんにとってもかなり刺激になってる印象です。
エウレカ:それぞれの良さを楽しませてもらってます。
──「90年代と今を繋ぐ」というコンセプトについても、もちろん単純なリバイバルではないと思っていて。そう感じるのは、エウレカさんの存在も大きかったりするのかなと。というのも、年齢的にもクロゴメさんやツチヤさんよりもお若いですし、そういう世代の違いが上手く作用しているのではないでしょうか。
クロゴメ:そういう部分はあるかと思います。イワサワくんも僕より全然若いですし。イワサワくんこそ、あの歳でなぜか僕以上に80〜90年代のギター・ポップをよく知ってて、それを僕も吸収しながら音を作ってるところもあるので。エウレカさんとイワサワくんが持っている要素のおかげで、単に90年代を映したものにはなっていない気がしますね。
■「Rideじゃん」って言われたいですね
── 最後にお聞きしたいのですが、今作で「ここは特に聴いてほしい」と感じている部分は、お二人それぞれ具体的にあったりしますか?
クロゴメ:あー、そうですねえ…。
エウレカ:難しい。笑 全部です。
クロゴメ:笑
──もちろん、そうですよね。笑
クロゴメ:1曲目の「One Hundred Tastes」は、今のFerri-Chromeが全て詰まってる曲だと思ってて。キラキラした感じとか、途中でちょっとシューゲイザーっぽいイワサワくんのギターが入るところとか。
── 冒頭からコーラスが入ってくる、という点においてもFerri-Chromeを象徴している気がしますし、アルバムの始まりとしてとても印象的ですよね。
クロゴメ:そのコーラスも、ユニゾンで始まって3重になっていくんですけど、非常にこだわって何回も録り直しました。「One Hundred Tastes」は一番聴いてほしい曲だなと思いますね。
クロゴメ:あとは、Rideにめっちゃ似てる曲があったりするので、それは「あ、Rideだ」って思ってほしいです。7曲目の「Silence」です。「赤ライド」とか「黄ライド」っぽさをあえて出したので、「Rideじゃん」って言われたいですね。笑
一同:笑
エウレカ:私も同じような理由で「One Hundred Tastes」ですかね。特にギターの音作りは「キラキラした綺麗な音を出したい」と思ってこだわったので、かなり良い感じになってると思います。
エウレカ:それ以外だと、6曲目の「Bloody Minded Hill」ですかね。Loco-Holidays(日本国内のシューゲイズ・シーンにおける最初期、1991年にデビューした3ピース・バンド)のカバーです。原曲もめちゃめちゃ良いんですけど、私たちも私たちなりの解釈でカバーしたので、聴き比べてみてほしいですね。
クロゴメ:確かに。
エウレカ:すごく良いカバーになったと思ってます。私は今まであんまりカバーをやったことがなかったので、すごく楽しかったです。カバーはまた何かやりたいですね。
◯ 2022年2月27日 Zoomにて
* * *
■ Release
□ Ferri-Chrome – Dazzling Azure
□ レーベル:TESTCARD RECORDS
□ リリース:2022/03/02
□ トラックリスト:
1. One Hundred Tastes
2. How Could I Feel You ?
3. Wavering Shadow
4. Colors Fade Away
5. At 7th Floor
6. Bloody Mineded Hill
7. Silence
8. Glad To See You
9. From A Wnidow
10. Dazzling Azure
各種配信リンク:
https://songwhip.com/ferrichrome/dazzling-azure
レーベルリンク:
https://testcard.thebase.in/items/58491594
■ Music Video
Ferri-Chrome – How Could I Feel You?
■ Profile
□ Ferri-Chrome(フェリ・クローム)
〈L→R〉
Yoshiki Iwasawa(Gt.)/ Manabu Kurogome(Vo. Ba.)/ Eureka(Gt. Cho.)/ Haruhisa Tsushiya(Dr.)