Posted on: 2024年6月20日 Posted by: Sleep like a pillow Comments: 0

文=笹川智香
編集=對馬拓
写真=シンマチダ

2022年に活動を始めたOaikoは、コロナ禍を経て変化したライブ・シーンを元に戻すのではなく“適応する”ことをコンセプトとして、音楽を噛み締めるようなライブ・イベントを主催しており、レーベルとしての顔も併せ持つ。今回は5月18日の『つどう』に続き、19日に下北沢近道で行われ、the pullovers、Hammer Head Shark、とがる、hardnutsが出演した『つづく』の様子をお伝えする。

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01 / the pullovers

憂鬱な天気のなか、フロアに集まった大勢の観客たちの前に姿を現したのはthe pullovers。スリーピース・バンドとは思えない音圧を放ち、一気に観客の熱量を引き上げていく。

キャッチーかつシンプルでありながら、オルタナティヴな質感を含んだバンド・サウンド。情感豊かなリリックを乗せた真っ直ぐな歌声は、我々の鼓膜を通じて、心を震わせる。

誰もが日常の中で募らせる、様々な感情に寄り添う彼らの音楽があれば、これからもきっと大丈夫。そう思わせてくれた。

the pullovers / setlist

1. 朝のテーマ
2. むてきのふたり
3. 夢を与える
4. 儚い
5. 世界がはじまるそのときは
6. 触れられない

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02/ Hammer Head Shark

続いては、Oaikoのライブ・イベントへの出演は2022年9月の『Oaiko vol.1』以来2度目となるHammer Head Shark。

浮遊感漂う、繊細で心地いいオルタナティヴ/シューゲイズを感じさせるサウンド。穏やかでありながら、激しい。冷静でありながら、感情的。綺麗でありながら、残酷。彼らの圧倒的な表現力が魅せる音像の揺らぎから、我々は目が離せない。

ながいひゆ(Gt. Vo.)は、「過ぎたことは消えない」と語っていた。この日の彼らの演奏は、消えることのない“たからもの”となって我々の記憶に在り続ける。

Hammer Head Shark / setlist

1. 綺麗な骨
2. 声
3. 魚座の痣
4. りんごの駅
5. たからもの

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03 / とがる

ステージを鮮烈な青に染め上げたのは、とがる。メンバー各々の内側からとめどなく湧き上がる激情が生み出すサウンドと、それに負けることのない、切なくも力強い歌声。

言葉にならない、できない感情を落とし込んだ彼らの楽曲。我々は轟音の渦に飲み込まれ、ただただ圧倒される。

この日は新曲「First Blue」を披露してくれたが、とがるらしさはそのままに、何か新しい一面を見たように感じる。天に突き上げた3本のギターの残響が、フロアに余韻を残していった。

とがる / setlist

1. Blue Boy
2. 散瞳不良
3. 19歳
4. 青から墜落
5. First Blue
6. せめてきみだけは
7. 生きた証

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04 / hardnuts

2日間に渡って開催されたイベントのフィナーレを務めたのはhardnuts。

1990~2000年代の影響を受けた爽やかなギター・ロック・サウンドには、技巧的な音像が散りばめられており、それでいて初期衝動的な激しさも感じさせる。上條(Gt. Vo.)ならではの言葉選びで情景を描写したリリックは、観る者を想像上の「夏」に連れていく。

アンコールで披露した「たゆたう」は、まさにゆらゆらと透明の海に浮かんでいるような感覚。演奏後の余韻は、夏の終わりに感じる焦燥感に似ていた。

そして今回、彼らの3rdシングルである「waypoint」が7月17日(水)にOaikoよりリリースされることが発表された。年月を経て、我々の生活は以前の日常に戻りつつある。しかしながら、全くの元通りになることはない。時の流れと共に少しずつ変化し続ける生活の傍には、いつも音楽が在る。3rdシングル「waypoint」、ライブ・イベント『つづく』というタイトル、そして4バンドが織りなす素晴らしい音楽を噛み締めた時間は、これからのhardnuts、Oaiko、ライブ・シーンに対する期待を膨らませるには十分だ。

hardnuts / setlist

1. grau
2. サンチマンタリズム
3. trace
4. 廻る季節に
5. 空白
6. Hellblau
En. たゆたう

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