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1991年にリリースされ、シューゲイザーの金字塔を打ち立てたMy Bloody Valentineの2ndアルバム『Loveless』。2021年11月でリリース30周年を迎えた本作を記念し、弊メディアでは「My Best Shoegaze」と題した特集記事を展開。これまで様々なリスナーを招き、各々が思うシューゲイザーの作品を5枚選んで公開してきたが、好評につき今後も不定期で更新していく。
【Feature】My Best Shoegaze
Vol.16は、3月に1stフルアルバム『Dazzling Azure』をリリースしたFerri-Chromeのクロゴメマナブが選ぶ5枚。
* * *
■ Ride – Smile(1990)
Label – Sire Records / Creation Records
Release – 1990/07/??
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中3でThe Clashのコンサートに行き、高校時代はエコバニ等のNWを聴きまくっていた自分は、大学ではテニスサークルでうつつを抜かし音楽から完全に離れていた。The Stone Rosesの登場も知らなかったくらいだ。就職して名古屋に赴任、独身寮でやることもなく音楽友達も一人もいなかったが、雑誌でようやく知り合ったNW好きな女の子とドライブに行った。その子が「すごいバンドがある」と車内で流してくれたのがRideの「Chelsea Girl」だった。衝撃を受けた。轟音ギター、甘美なメロディー、マークの美しい声。一気に音楽の世界に引き戻された。「Like a Daydream」にも更に衝撃を受け、編集盤『Smile』を購入。その2年後に初めて自分のバンドを結成。長きに渡るバンド人生はここから始まったのである。
■ Pale Saints – The Comforts of Madness(1990)
Label – 4AD
Release – 1990/02/12
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Rideを知った自分はシューゲイザー・バンドを買い漁ることになる。中でもPale Saintsの1stは自分を夢中にさせた。天使のようなイアン・マスターズの声は今でも世界で一番好きなヴォーカリストであり、自分の理想でもある。2回目の来日を京都で観る予定が大渋滞で辿り着けず、残るは日曜日の札幌のみ。チケットもないのに日帰り札幌行きを決行、愛知から羽田空港まで車で行って札幌に飛んだ。奇跡的に当日券があった。「Way the World Is」で始まりアンコールラストは「True Coming Dream」、これ以上ないセットリストで感激しまくった。行きの高速道路で警察にスピード違反で捕まったり色々あったが、何とか朝方に名古屋に到着。一生の思い出に残るライブとなった。
■ Loco-Holidays – Engine Flower(1991)
Label – Confusion
Release – 1991/11/21
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日本のシューゲイザー創始期を代表するバンド。浮遊感と激しさが混在するギター、ポップなメロディー、繊細で美しい男女混成ヴォーカル、まさに自分の好きが全部詰め込まれた、当時日本で一番好きなバンドであった。その後バンドを始める自分にとってこの男女混声のキラキラ感が指標となる。当時ライブを観れなかった自分は、2013年の再結成ライブには驚喜したものだ。そして、その後ドラムのキンヤさんとShortcut Miffy!でご一緒させていただき、Hidekaさんとも仲良くなりこの執筆の数日前に飲んだりしている。一人独身寮で黙々と聴いていた自分にこんな音楽人生が待っているとは夢にも思わなかった。Ferri-Chromeでは「Bloody Minded Hill」をカバーしている。
■ Moose – Sonny & Som(1991)
Label – Hut Records
Release – 1991/??/??
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初期EP3作を編集したミニアルバム。シューゲイザーの語源はこのMooseがいつも下を向いて演奏していたところから、と言われている。言わば元祖なのだがやや地味な存在で、しかも途中からサイケポップとなりシューゲイザー的作品はこれのみである。しかしここに収録されている「Suzanne」を初めて聴いた時は背筋に電流が走った。緊張感の溢れるコード進行、高揚していくギター・ノイズ、名曲中の名曲であると思っている。どの曲も独特のポップ感があり、世界観に引き込まれていく。サイケポップとなってからも良い曲が多く、全てのアルバムを持っている大好きなバンドである。「Suzanne」は現在Ferri-Chromeの登場SEとして使用している。
■ スーパーカー – スリーアウトチェンジ(1998)
Label – dohb discs
Release – 1998/04/01
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28歳の時に札幌に転勤が決まる。まさかのPale Saintsを日帰りで観た札幌。その時はSunnycharもHeaven’s Beachも終わっていて、結婚もしたしバンドはもう終わりにしようと思っていた。その頃札幌のタワレコでたまたま試聴したのがスーパーカーの「cream soda」だった。本当に衝撃を受けた。轟音ギターにツボを突きまくるメロディーライン。10代の人たちがこんなにすごいことをやっているのか…。もう一回ちゃんとバンドやろうと思い直し、結成したのがMica Flakesであった。1999年、RISING SUN ROCK FESTIVALで初めて彼らのステージを観た時は感激したものである。Rideから始まったバンド人生は、スーパーカーがいたからこそ今でも続いていると言っても過言ではない。
文=クロゴメマナブ(Ferri-Chrome / Mica Flakes / Shortcut Miffy!)
編集=對馬拓
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■ Release
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□ Ferri-Chrome – Dazzling Azure
□ Label – TESTCARD RECORDS
□ Release – 2022/03/02
Author
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