Label – Kanine Records
Release – 2013/06/04
イースト・ロンドンで結成されたSplashhの1stアルバム。
本作は、初期衝動の水しぶきのように良い意味で青臭い。ジャンルで言えば、ローファイな音のサイケ・シューゲイズ・インディー・ロックになろうか。アートワークはLeif Podhajskyによるものである。彼はTame Impalaの『Innerspeaker』や『Lonerism』、Toyの1stアルバム『Toy』などのネオサイケ界隈を中心に、FoalsやBonobo、OMAMまで幅広いジャンルから名だたるアーティストのアルバム・アートのデザインを手がけている。
気だるいギター・サウンドはありふれているが、このアルバム全体を覆っている、まるで白昼夢をサンプリングしたような音像はありそうでなかった。聴きたかったサウンドに違いない。
ちなみに、ロンドンで結成されたバンドであるものの、Splashhにロンドン出身のメンバーはいない。トトはイタリア生まれオーストラリア育ち、サーシャはニュージーランド出身でバンドの結成までオーストラリアに住んでいた。他のメンバーにもロンドンっ子はいない。そういった背景も、夏らしさを演出するのに一役買っているのかもしれない。
本作は当時のUKインディ・ロック・シーンを変える衝撃作だった訳でもなければ、批評家たちにもてはやされるような話題作でもなかったし、来日も叶わぬままだった。ただ、Splashhの描いた夏は未だに色あせず多くの人々の中にある。じりじりと暑くぼんやりとした記憶は心地よく固定されている。もしいつか2010年代の夏を思い出す時があれば、たった30分強のこのアルバムほどそれをよく象徴している音楽はないかもしれない。
text:Reiya Suzuki