自分たちでなんでもできるっていうDIY的な部分はすごくありました
── 今作は、前作と違ってTESTCARD RECORDSからのリリースではないことに、少し驚いたんですよ。「ghost」や「tip of a finger」の7インチの時と同じで自主リリースですよね。自分たちだけでやりたい、というような思いがあったのでしょうか?
それはありましたね。自主で一度やってみたいっていうのは純粋にあって。7インチも無事にリリースできたし、アルバムも今回は自分たちだけでやろうか、っていう話になって。
── 自主リリースになって、前作と変わった点とか、大変だったことはありますか?
色々あったんですけど…特に2020年はコロナのこともあって、アルバムに付随したイベントやライブがなくなってしまったし、前回と状況が全然違うから、比べるのが難しいっていうのはあります。ただ、自主で出す分、すごく自由が利くし、マネジメントとかプロモーションは大変だけど、自分たちでなんでもできるっていうDIY的な部分はすごくありました。今作はインディーズの集大成、みたいな感じにはなったかな。
── なるほど。今作は、歌詞カードが透明になったり、アートワークにも強いこだわりを感じました。
デザインしてくれたのは、『SPOOL』と同じちかさん(Chika Hosoi)です。昔リリースした『sink you』とか『私は泳ぐ、メロンソーダ』とかも、全部彼女です。
── そうなんですね。確か、昔からのお知り合いですよね。
高校の同級生です。
── あゆみさんがInstagramに上げてたポートレート写真も同じ方ですか?
そうですそうです! 普通に友達でもあり、デザイナーとしてもお世話になっています。
── 透明な歌詞カードを重ねる、というアイデアは、どこから生まれたのでしょうか?
それも、彼女の発案です。「cyan」と「amber」の二つの世界が一つに重なってる、っていうイメージを伝えたら、「こういうのはどうかな」って提案してくれたのが透明な歌詞カードで。私のイメージしているものを具現化してくれるクリエイティビティに溢れた人ですね。
── 言葉で模様を描いているようなデザインを見て、それこそミスチルのアルバム『I ♡ U』の歌詞カードを思い出したのですが、その辺りはどうなのでしょうか。
そうなんですよ。実は意識してて、そこは彼女にも「文字がデザインになってるのがすごく可愛くて」って軽く伝えたら、ああいう風に出来上がって。私の希望を汲み取りつつ、新しい表現を作り上げてまとめてくれて。
── もう、SPOOLの五人目のような存在ですね。
本当にそうですね。でも五人目は、後ろにいっぱいいる。自主って言っても、周りで支えてくれる人だったり、一緒に作ってくれるクリエイターがたくさんいるので。
── チームとして、本当にいい状態なのが伝わってきます。
そうですね。いいチームだなって思いますね。
「あ、終わってしまった! もう一回聴こう」っていうループ感を意識しましたね
── あゆみさんは「アリスとテレス」が一番好き、ということでしたが、他のメンバーはどうなんでしょうか。
aran(Dr.)は「cyan」がかっこいいって。ドラムが好きって言ってましたね。すみちゃんは「come for me」、安倍さんは「天使のうたごえ」。やっぱり安倍さんは、最後の曲が好きみたいですね。前作は「モ ル ヒ ネ」だったし。笑 おすしさん(對馬)的なベスト・トラックは?
── 難しいな…。先行配信だったら「スーサイド・ガール」かな……。今までは、SPOOLの全部の曲の中で「ghost」が一番好きだったんですけど。
超えましたか?
── 超えるか超えないかぐらいのところまできてますね。
嬉しい。
── あと「cyan」もすごい好きです。でも、「天使のうたごえ」の、身体の力が抜けていくような感じも好きだし、難しいですね。今作は特に難しい。
特にこれ、っていう感じでもないのかもしれないですね。
── 確かに、トータルで価値がある、っていう。それってアルバムにとってすごく良いことだと思います。今ってサブスクの影響で、アルバムをしっかり聴くというよりも、曲をかいつまんで聴く傾向が強いと思うんですけど、そんな中でアルバム単位で聴くべきものを出すっていうのは、とても意義のあることだと思います。
ありがとうございます。「スーサイド・ガール」みたいなリード曲はしっかりリリースしつつ、ちゃんとアルバムとしての作品も出すのが自分のポリシーというか、貫きたい部分ではあったので。この時代だからこそアルバムを出してやるんだ、っていう強い思いはありました。でも、ちょっとした時に聴いてもらいたいっていうのもあって。『cyan / amber』はトータルで36分くらいなんですよ。通勤とか通学とか、ちょっとした移動中に一枚聴けるくらいのボリュームになるように意識してて。あんまり長すぎたり重すぎたりすると、日常的に「聴こう」って思えないから。
── なるほど。それこそ、ちょうど僕の通勤時間くらいかもしれないです。笑
前作もあんまり長くなかったけど、アルバムとしてすごくいいって言ってもらたのが嬉しかったんですよ。だから今回も、「あ、終わってしまった! もう一回聴こう」っていうループ感を意識しましたね。
── アルバムの構成としてもループしてますからね。
そうなんですよ。
── なんというか、サウンドの馴染みの良さとか、言葉がスッと入ってくる感覚もあるので、飲み物を飲むような感覚で聴けるのかなって。
確かに。飲む感じですよね。ちょっと飲んでくか!みたいな。笑
── 笑
一枚聴くか!みたいな。それくらい、日常に溶け込むようなアルバムにしたいなっていうのはありました。作品のパッケージとしても本当にこだわって作り上げたので、ぜひ手にとっていただきたいですね。みんなの宝物になるようなものになればいいなと思ってます。
── まさに、フィジカルで出す意義みたいなものがそこにはあると思います。今の時代の流れとして、ただCDを出すだけでは、もうダメだと思うんですよ。
私もそう思います。ただ出すだけだったら意味がなくて、それだったらサブスクでいいわけで。逆に自分だったらどんなものが欲しいだろう?っていうのは、発信するアーティスト側として今後も考えていかないといけない問題だと思います。
── やっぱり、作り手の意図というか、意識が息づいてるものってすごくいいですよね。「作品」という感じがします。
ものとして手に触れたいというか、残したいっていうのは自分たちとしてもあるし、そういう文脈が伝わるようなパッケージとしての作品を、これからも発表していけるように頑張ります。
◯2020年12月13日 都内某所にて
■ Release
SPOOL – cyan / amber
Label – Spring Records
Release – 2020/12/23
1. opening
2. cyan
3. あめ
4. スーサイド・ガール
5. ghost
6. amber
7. come for me
8. アリスとテレス
9. 天使のうたごえ
10. ending
■ Profile
SPOOL are
こばやしあゆみ(Vo. Gt.)
ショウジスミカ(Gt.)
安倍美奈子(Ba.)
aran(Dr.)