どうして僕はSPOOLの活動を追い続けるのか。
初めて彼女たちにインタビューを申し入れたのは2018年の秋頃、下北沢THREEでのライブの後だったと思う。当時はこれから幾つか行う取材の一つくらいに考えていたが、彼女たちのことを知れば知るほど、僕はSPOOLの虜になっていった。
そして、時を経て今回のインタビュー。SPOOLへの取材としては3回目になる。彼女たちから話を聞いて、今までSPOOLを信じてきたことが間違いではないことが改めて実感出来た。
SPOOLは2019年を止まることなく駆け抜けた。そこで手に入れたのは、バンドとしての強靭さと新たな表現だった。この殺伐とした時代と共鳴し、SPOOLは次なるフェーズへと突入したようだ。今回のインタビューを読めば、僕がSPOOLの活動を追い続ける意義がお分かりいただけるだろう。制作秘話から、SNSの話まで。メンバーの4人と、PAやエンジニアとして共に活動するkazuaki kondo(MELLOW SOUNDS / magic love)に、2019年を存分に振り返ってもらった。
interview / text by osushitabeiko
photo by Yusuke Masuda, Machida Chiaki
はじめに
— 2019年、どうでしたか? ちょうど1年くらい前…アルバムのリリース時に話を聞いて、それ以降どうだったかというところなのですが。
こばやしあゆみ(Vo. G. / 以下あみ):今年も色々忙しかったよね。…今年?
一同:笑
あみ:今年じゃない。もうダメだ。笑 2019年。2018年と2019年はめちゃめちゃ突っ走った。
ショウジスミカ(G. / 以下すみ):2018年より忙しかった。
あみ:そうね。さらに忙しくなった。
— 今までで一番忙しい年…?
あみ:本当にそうだったと思います。活動的で。ツアーも行ったし、台湾も行ったしね。新しい場所でライブをやったり、変化が多い1年だったなと思いますね。
アルバム『SPOOL』リリース後
— 2月にアルバムが出まして…。
あみ:アルバムが出た週はめちゃめちゃ忙しくて。いろんなお店回ってコメントも書いたよね。
aran(Dr. / 以下あらん):回ったね。でも楽しかったな〜。
安倍美奈子(Ba. / 以下あべ):楽しかった!
すみ:その週にライブもあった。
あみ:ラジオも出たしね。
— 出てましたね。
あみ:あらんの地元のラジオや吉祥寺のラジオにも出たよね。
kazuaki kondo(MELLOW SOUNDS / 以下こん):俺はずっと特典作ってた。
一同:笑
あみ:あれすごい良かったよね、池袋のHMVの…。サイン会みたいな台。笑
一同:笑
すみ:何も言わずに色々やってくれたよね。
あみ:挨拶に行ったらすでに私たちのことを知ってくれてて。自分が知らないところでバイヤーの方が展開してくれたりCDを置いてくれたり…本当に驚きました。
あらん:CD屋さんに置いてあるっていうのが初めてだったからね。
あべ:かなり感動しました…。
あみ:それだけで嬉しかったし、思ったよりもいろんな人に聴いてもらえた作品ができたなっていう感じですかね。2月は他に何かあったっけ?
すみ:あ、Ringo Deathstarrと対バンした!
あべ:うわー、そうだ!!!
— Total Feedback!
あべ:前日に知ったんだよね、対バンするって。
THE NOVEMBERS・小林氏のフックアップ
あべ:3月は企画がありました。
あみ:大乱闘(轟音ブラザーズ)。
— あれって3月か!
すみ:懐かしい〜。もう2、3年くらい前の記憶みたい…。
あみ:なんかもう、アルバム出してからの2月とか3月の記憶が…あるんだけど、すごい遠い昔のような感じがする。
すみ:去年っていう感じがしない。
あべ:その企画、THE NOVEMBERSの小林さんが「行きたかった」っていうツイートをしてくださったのをすごく覚えています。
— 言ってましたね…!
こん:PA初めてやったのってそこだっけ?
あべ:リバコレ(TOKYO REVERB COLLECTION)では?
あみ:あれはもう一昨年ですね。コンさんの初PAがそこでした。
あべ:そうでしたか!
— そうでしたか?
一同:笑
あべ:へ〜〜〜。そうだったんだ。(※いや覚えといて!)
あらん:どうですか、PAやって。笑
こん:大変だな〜って。笑
あみ:このバンド大変だな〜って。笑 声は小さいのに、ギターの音はデカい!みたいな。笑
こん:笑
— 近藤さんがフリーになったのって、去年(2019年)からでしたっけ。
こん:2019年の1月から。だから『SPOOL』を録ってた時は仕事の合間に、っていう感じで。
あみ:私たちも、活動にのめり込んだのはリバコレからだった気がする。チームというか、コンさんだったり、ぬーひーさん(※cattleの肥沼さん。SPOOLが音源をリリースしているレーベル「TESTCARD RECORDS」の代表でもある)もそうだし、マスダさん(※SPOOLのアー写やジャケットを手がけるカメラマン)もそうだし。いろんなスペシャリストが集って、バンドとして大きくなれた1年だったのかなって。いろんな協力があって、みんなで盛り上がって、良い作品が出来たよね。たくさんのパワーが集まってる感じ。ふふふ。
あべ:おすしさんも、そうです。
あみ:そうです。
— ありがとうございます!
あみ:まあ、それで3月は企画やって、2月に引き続きリリース関係のことをやってた感じですかね。
— そもそも、THE NOVEMBERSの小林さんがTwitterでフックアップしたのって3月でしたっけ。
すみ:3月の途中の祝日だった気がする。
あべ:めっちゃ飛び上がったよね。
あらん:私あの日遅刻した。飛び上がったせいで。笑
あみ:私もボーッとTwitter見てたら「お???」って。笑 夢ですか?って。
あべ:いや〜夢だと思ったね。
— だから、2月と3月で一気にバーッと盛り上がって行ったような印象で。
あみ:そんな気がしますよね。その辺りから、世間的にも知ってもらえることが多くなって、だんだん広まって行ってるなっていう感覚は自分たちでもありました。
名阪ツアーとワンマン
あみ:ツアーとワンマンが4月ですね。大阪と名古屋行ったね。近藤さんと。
あべ:近藤さんが運転してくれました。
あみ:夜中に出発して、運転とPAを。
こん:笑
すみ:SEAPOOLとKILL MY 27のHITOMIさんに会えたのが良かった。
あみ:そうだね。自分たちが好きなバンドを呼んで、普段とは違う土地で。
— april aprilも呼んでましたよね。
すみ:名古屋!
— 名古屋って結構「シューゲイザーの土地」っていうイメージがありますね。softsurfとか、溶けない名前とか。
すみ:EASTOKLABも。
あみ:意外と名古屋出身のバンドが多いんですね。
あべ:距離感が東京のバンドと似てるのかも。あんまり派手な感じではなくて。
すみ:お客さんもゴリゴリな感じじゃない。
あみ:大阪は派手だもんね。街もすごいし。
すみ:バンドもゴリゴリだったもんね。
— 分かる気がしますね。
あみ:土地感はやっぱり出るんだなって、ツアーに行って思いましたね。
すみ:名古屋は、april aprilが出てくれたのが一番嬉しかったかな。もう2年くらいライブしてなくて、誘ったらまさかの出てくれるっていう。
あみ:昔、埼玉のライブハウスでよく一緒にやってたバンドだったので、観た瞬間、昔のこととか全部思い出して、すごい泣いちゃったんですよ。笑 感極まってしまって。すごく良いバンドだから、なんかね。私たちが続けて欲しいっていうのもアレなんだけど、終わって欲しくないって思っちゃったから。
— 良い話ですね…。
あべ:近藤さんはツアーどうでした? PAとして。
こん:う〜〜〜ん。
あべ:私、あの…名古屋の時に、コーラスがないセットリストだったのにそれを言い忘れてて。笑 私の前にマイク立てなくて良かったのに立ててもらっちゃって。
あらん:セッティングが全部終わった後に言ったから、すっごい「ああ?!」ってなってて。笑
あみ:本気の「ああ?!」だった。笑
こん:別に良いんだけど。笑 大阪から一緒だったじゃん?笑
一同:笑
すみ:事前に言えや!って。笑
こん:怒っちゃいないんだけど。笑
あべ:言うタイミングいっぱいあったろ?っていう。笑
— まあ、コミュニケーション不足ということで。笑
あみ:そうそうそう。笑
すみ:まあ、何回かある。笑
あらん:やっぱり私たちは近藤さんがPAだと安心してできるよね。
— それゆえの甘え、みたいな?
あべ:おっしゃる通りです。
こん:なんでも許されると思うなよ。笑
一同:笑
あみ・あべ:すいやせん。
— まあ、そんな一幕もありつつ、4月はワンマンもありました。
すみ:楽しかったよね。
あみ:楽しかった。一番楽しかったかも。
あべ:ecoのみ焼き(※SPOOLの前身バンド)から振り返っても一番楽しかった。今までやったライブの中で一番。本当にそう。
— すごいですね、それ。
あみ:ワンマンの楽しさを知ってしまった。
あらん:自分たちのことだけを観に来てくれてるってことだから…。
すみ:純粋なファン。
あらん:しかもCDの特典のライブだから、みんなCDを聴いてくれてて。
すみ:お客さんが結構来てくれたのも嬉しかった。
あみ:アルバムの曲順通りっていうライブもやりたかったし。やりたいことは口に出すもんだなって。理想はどんどん口に出していかないと何も叶えられないし、現実がどうとか考えてたら多分何も進まないと思うんです。だから、その辺りから結構「これやってみよう」「あれやってみよう」って言うようになったし、そのワンマンも言ったことによって実現できたので。出来て良かったなって思います。平成最後の良いタイミングだったし。連休前の金曜日でお客さんも来てくれたし、良い終わり方だったよね。今年はもっと大きい所で出来るように頑張ります。特典とかじゃなくて。
あらん:近藤さんはどうですか? ワンマンでPAやってみて。
こん:CDのレコ発だから、音源にどれだけ近づけられるかっていうのをやってたけど…。まあやっぱりギターはちょっとデカかったね。
一同:笑
あみ:あの頃は結構オラついてたから。すいませんでした。笑 まあでもあれはあれで…。
こん:評判良かったからね。
あみ:ありがとうございました。
— やっぱりみんなデカい音を聴きに来てるのかなって。
あらん:そのライブで一旦アルバムの活動は…。
すみ:きっぱり終了。
— あ、そうだったんですね。
あみ:ちょうど良かったよね。あれをやったことによって自分たちとしてもなんかもう「ここで次のステップに進もう」って思えたから。良い意味で締めになったよね。
すみ:逆に引っ張りすぎても…っていうのもあったから。
あみ:「完」っていう感じ。
“ghost” 楽曲制作背景とレコーディング
あらん:あみちゃんが”ghost”持ってきたのって…。
あみ:あれ何月だったっけ?
あべ:3月だった。
あみ:早いよね。笑
すみ:ツアーに行く時はもう曲聴いてた。
あみ:そうだそうだ! ツアーの特は「もう出来てるから早くみんなに聴いてもらいたい」って言ってたね。
すみ:で、”tip of a finger”が出来たのはゴールデンウィークだった。
あみ:そうだ。じゃあもう(アルバムを)出し終わった後…何月とかあんまり覚えてないけど、すぐに作ったんでしょうね。
— 早いですね…。
あみ:早いですよね。笑 もう3月には(”ghost”を)作ってたんだ。
あらん:なんか…(アルバムを)リリースしたばっかりなのに、また新しい”ghost”っていう曲を持ってきたのが、すごいなと思って。笑
すみ:しかも期待を裏切らない感じの曲。1回こう、アルバムでもてはやされたから…。
— もてはやされた。笑
一同:笑
すみ:持ち上げられたから。笑 でもバンドとしての方向がブレずに曲が出来たっていうか。
— 確かに、アルバムの方向性をより突き詰めた感じはある。
すみ:さらに進んだ先というか、似かよるわけでもなく同じ位置にいるわけでもなく、みたいな。
あみ:そうだね。確かに。そう思ってもらったなら…。まずは自分が良いものを作って、メンバーに「良い」って言ってもらわないと私は進めないので。納得できるようなデモを作るっていうのが自分の中でまず最初のステップ。で、一聴してもらって、「良い」ってすぐ言ってもらえたので「良かった〜!」と思って。一安心ですよね。で、そこからいつみんなで合わせたりしたんだろうね?
すみ::5月のライブですでに”ghost”はセットリストに入ってた。
あみ:そっか。割とすぐやったんだね。
あべ:ベースのフレーズはゴールデンウィークに考えた記憶がある。
あみ:そうだったかも。
すみ:まずサブスクをやるっていうのは1月の時点で構想はあったもんね。サブスクでの配信リリース。
— へー!!!
あみ:そう。だからそれに向けて作ったっていうのはありました。1月の時点で「次は配信シングルを出そう」っていう話はあって。で、それに向けてシングル曲をどんどん作ろうみたいな。なんか、リリースを途切れさせたくなくて。「ここで止まっちゃいけないな」と思って、考えた案として配信シングルがあって。それに合わせて作ったのが”ghost”と”tip of a finger”なんですよね。
— なるほど。
あみ:『SPOOL』というアルバムは…。今となってはすごい良かったと思うんですけど…。
— 今となっては?
あみ:今となっては、です。出した当初は結構…やっぱり納得がいかない部分がすごく多くて。自分としてはすごく消化不良で、なんか…世の中には広まっているけど、自分はまだ納得がいってないし、「こんなもんじゃない」っていうのがあったから…。
— その世間との乖離、みたいな。
あみ:そう。差を感じてしまって。でもみんな「良い」って言ってくれてて。全然やれることはやったし、このアルバムでしか出来ない拙さとかいろんなものが詰まっているのは分かるんだけど、どうしても自分の理想とはまだ全然かけ離れていたから。「結局みんな何を見ているんだろう?」みたいな気持ちになってしまって。すごい「ズーン」って落ちちゃったんですよ。最終的には自分が納得していないとやっぱり「良い」って思えないから。それなのになんでこんなに「良い」って言ってもらえてるのかよく分からないな…ってとこまで来ちゃって。その時期に作ったのが”ghost”なんですけど。
— そういう背景を聞くと、色々曲に対して納得するというか。
あみ:そこから出てきた言葉とかメロディーなんですよね。だから、うん…。全国流通は良かったんですけど、「世間に出す」ってこういうことなんだなって思ったし、ずっと自分は潜ってたから。いろんな人の目に触れるってこういうことなんだなって。
— やっぱり作品って、良い意味でも悪い意味でも自分のものじゃなくなるというか。
あみ:まさにそういう感じです。
— 色々渡り歩いて行くものですよね。
あみ:今まではずっと自分の手元にあったものが、どんどん変化しちゃって、自分のものではなくなっていくような感覚があって。良いことだっていうのは分かってるんだけど、その変化にまだついていけてなくて。すごい落ちちゃったんですよね。
— まあでも、確かに急でしたよね。それまでずっと…地下じゃないですけど、潜って活動してたのが、「バッ!」って広がって。
あみ:そうそうそう。その変化についていけなかったんですよね。
— それを曲に…「した」というか、「なった」んですかね。自然に。
あみ:そんな感じかな。なんか…しんどかったんですけど、かなしみって底を尽きると「無」になるというか。
— じゃあ本当にもう、そこまで行ったんですね。
あみ:そこまで行って、もう空っぽになった瞬間に、「あ、ゴースト!」ってなったんですよ、自分の中のテーマが。結構曲名から作ることが多くて、なんとなくその時の自分の中のテーマみたいなのがあって、その時はそういうものを感じたから。「かなしさ」とか「むなしさ」、それで全部空っぽ…みたいな。そういう所まで来て。なんかもう涙も出なくて「無」っていう。笑 そこから出てきた「ゴースト」っていうワードから膨らませて、歌詞を書いていって。
— ふむふむ。
あみ:でもなんかもう…出来上がると「良かったな」って。「辛いのも良いな」って。笑 毎回そうなんですけど。その時は辛いけど出来上がってみると…やっぱり辛くなかったら出来なかったことなので。当たり前だけど。自分の場合、そういうマイナスのもの…「怒り」とか「かなしみ」とか、そっちの方がものを作る上で原動力になってるんですよ。多分「幸せ」とかそっちよりも。「作ってやる!」みたいな。笑 そういうタイプだから、「幸せになりすぎない方が良いんじゃないかな?」って。笑
— 笑
あみ:そういう思いもあるし、幸せになっちゃったら逆に怖い。「幸せになることを望んでないのかな?」ってくらい、(かなしいことを)探しちゃってる。マイナスの感情がいつも自分を動かしているんだと思います。それが特に出たのが”ghost”かな。
— じゃあ本当にもう究極ですね。
あみ:今まで作った曲の中で究極にそっちのベクトルに振り切ったっていう感じ。
— 初めてこの曲を聴いた時、すっごい温度が低い曲だなって思って。「なんだこの感じは?」って衝撃を受けたのは、きっとそういうことですね。
あみ:ふふふ。
— 個人的にこの曲はSPOOLの中で一番好きですね。
一同:え〜〜〜!
あみ:嬉しい。
— 今までは”モ ル ヒ ネ”だったんですけど。
一同:笑
あみ:「死」に近い側の曲が好きなんですね。笑
— そうですね。笑 この曲やべえ!と思って。
あみ:本当に低温ですよね。低温火傷するんじゃないかってくらい、冷たくて。しんどすぎるから、なんかもうお化けになって心を失った方がマシだっていう思いもあったんですよね。だから多分そうなったんだと思う。でも本当は失いたくなし、心を持っていたいし、誰かと向き合っていたかったけど、もう無理だから一人で歩くしかない…みたいな。「お化けになることを選んだ」というか。すごく抽象的で分かりづらい話なんですけど。
— まあ、言葉にできないから音楽にしてるんですよね。結局は。
あみ:そう。そうなんですよ。だからサビ…「ここがサビかよ!」って言われるんですけど、「ウ〜〜〜」の部分が私的にはサビで。笑 そこは音楽だからこそ表現できるものだと思うし、言葉にすることは余計だし「違う」って思ったんですよね。ここで何か言うのも違うし、沈黙が答えだなと思ったので。「嘆き」だけなんですよ、サビで言いたいのは。「何も無い」ってことを言いたい、みたいな。「無」が答え。語ることを諦めたっていう。
— なるほど…。すごいな。
自分は割と歌詞を書く時に…前もインタビューで言ったと思うんですけど、メロディーに言葉を当てはめて曲を作ってて。出来上がって初めて「こういうこと考えてたんだ」って気づくことが多くて。今回もモチーフは「ゴースト」って決まってたんですけど、歌ってたら勝手に言葉が出てきたんですよね。だから”ghost”はほとんど考えたりしてなくて、勝手に「スーッ」って…魂が言葉になった。
— もう、それって一種のそういう「境地」ですよね。
あみ:今までになく辛い所まで落ちたからこそ出来上がった曲なのかなと思います。
— いや〜〜〜。すごいですね。…って、小学生の感想かよ。
一同:笑
— 気を取り直して、レコーディングの話も。
こん:この曲からリズム録りがクルーソーになったんだよね。
あべ:そうですそうです。
あみ:8月ですね。
こん:外部のスタジオでリズムを録らせてもらって。Studio Crusoeです。『SPOOL』を録る時は普通のリハスタ…8畳くらいの狭い所に俺の機材を全部持ち込んで録ってて。しんどいし音分かんないし、録ってからなんとかするっていう一番しんどいやつをやってた。
あみ:劣悪な環境で録った作品だよね。笑
こん:で、次配信するにあたってステップアップしたいっていう話をしてて、リズムだけでもスタジオで録ってみようという話になって。で、クルーソーで録ってみようか?って。同じ日に”tip〜”と”ghost”のリズム録りをしたけど、大変だったね。笑
一同:笑
すみ:その場には居合わせなかったけど…。
あみ:噂には聞いてる。笑
あべ:ゴーストになりそうでした。笑
あみ:相当落ち込んでたよね?笑
あべ・こん:やばかったです。
— 何がそんなに大変だったんですか…?
こん:最初、打ち込みで作ったドラムを生で叩こうとしてて、でもプリプロの段階で「ゴースト」のイメージとズレが出てきて。ハットで刻むのか、ライドで刻むのか、みたいな。もうちょっと無機質さが欲しいな、とか。急にプロデューサーみたいになってきちゃって。笑
一同:笑
すみ:ドラムだからこそ。笑(※kondoさんはmagic loveのドラマーでもある。)
こん:ここはハットで行って、ここからライドに行った方が展開的にすごく「らしく」なるんじゃない?って話をして。でもその前から結構苦戦はしてたんだよね? 苦戦してた所に俺がそう言い出したから…。また新しいことをやらなきゃいけなくなって、疲れ果ててた。笑
あらん:笑
こん:まあでも、それで全部録り終えて。ベースはそんなに苦労しなかったよね…?
あべ:そうですね…。笑
一同:笑
こん:あらんちゃんが疲れ果ててるイメージしかなくて。笑
あべ:自分の記憶があんまり…ないですね。
あらん:泣いてた。笑
あべ:なんも言ってあげられなかった。笑
こん:ブツ切りで録っても良かったんだけど、流れでしっかり残しておきたいっていうのがすごいあって、それを考えていくと、「このテイクじゃ厳しいかもな」っていうのを(あらんに)伝えて、「はあ…」って落ち込んで。「もう一回やります」って言って。そういう繰り返しがあって、時間ギリギリまでかかったね。でも、結果としては良かったです。ちゃんとレコスタ(レコーディングスタジオ)で録ったからこそ、奥行きみたいなのがすごく出て。『SPOOL』の時はいろんなエフェクトをかけて奥行きを出していたけど、マイクのミックスだけで出したい感じがすぐに完成できて。「ここにウワモノを乗せれば良いんだ」っていうイメージがすぐに出来る感じに録れたから良かった。
— なるほど。
こん:で、ギター録り。
すみ:ギターは、前(アルバムの時)は近藤さんの家でライン録りして。
こん:ライン録りでアンプシミュレーターを使って録ってたのがほとんど。『SPOOL』では”Be My Valentine”と”No, thank you”だけスタジオで録って、あとは全部俺ん家で録ってたのがほとんど。
すみ:近藤さん家で過ごしたね。
— 笑
こん:色々理由があったけどね。(”Be My〜”を録った)スタジオ、隣の音がアンプからだだ漏れになってて。隣で爆音で鳴ってるから、どうしても拾っちゃって。笑 このまま他の曲も録るのは厳しいよね?って話になって。
すみ:”No, thank you”と”Be My〜”は結構うるさい曲だったからなんとか…。
こん:隣のスタジオが静かな時を見計って録ってたよね。笑
あらん:「休憩中だ、やろう!」って。笑
こん:それだったらうちで録った方が良いかなって。その他はクリーン系の、ひずみのない感じの曲だったから、アンシュミでもまだ大丈夫かなって。それで切り替えて、結果としては良かったっていう。でもアルバム以降の曲に関しては…。”Be My〜”のひずみの感じとかはすごくきれいだったから、ちゃんとアンプで鳴らした方が良いなって。
あみ:アンプで鳴らすと全然違うんですよね。
すみ:奥行きが本当に違う。
あみ:(アンシュミだと)硬くなっちゃうんですよね、音が。
こん:曲によってはアンシュミの方が良いっていう時もあるし。
すみ:アルバムは割とそれで良かったくらい。
こん:でもやっぱり”ghost”に関しては特に「おぼろげ」な感じ…ちょっと芯がブレた感じっていうのが個人的に欲しくて、アンプでしっかり鳴らしながら、結構リバーブ多めな感じ…「居るんだけど、ぼやけてる」みたいな感じをちゃんと出したいと思って、(レコーディング)スタジオで録りたいってなって。
あみ:そうですね。”ghost”はスタジオで録って良かったなと思います。あれはアンプじゃないと出せない空気感。
— やっぱり一聴して「違うな」って感じてました。素人でも分かるくらいの感じ。
あべ:嬉しいです。
あみ:(音の)広がりがね…。
こん:無理して出してない。力がない感じ。
あみ:うんうん。確かに。その感じを汲み取ってもらって出来たのが良かったなと思います。
“ghost” MV制作
— では、MVの話を…。
あみ:あ〜〜〜〜〜!笑 最悪の…。笑
一同:笑
あみ:(MVは)体張らないと終わらない、みたいな。笑 自ら「水死」を選びましたね。
— これ、水に浸かったのいつですか?
あみ:9月です。この日は暑かったんですけど、水に入ったのは夕方の気温が下がり始めた頃でした。笑
— 寒い!
あみ:今回も大まかな内容は自分たちで考えて、監督さんに投げて、お互いにアイデアを出しながら作りました。間奏で”Be My〜”のMVの映像も入れたり。「生きてた頃の自分」。笑
— 生きてた頃の。
あみ:「死んじゃった感」を演出。笑
こん:ここ(間奏)、結構音像がリバーブ深めで、遠くなっていく感じになってて。
あみ:回想シーンなんですよね、私の中で。だからリバーブ深めで。この場所も良いよね。
すみ:廃病院…廃ホテル?だっけ。
あみ:本気のゴースト。笑
— 笑
すみ:このスモークも、演奏しながら足で踏んで出してて。DIY!
あみ:踏むと出るから、タイミングを見ながら誰かが踏んでて。
— すごいですね。
あみ:この花火のところは、私怖くてめっちゃ反ってるんですよ。
一同:笑
あみ:結構ポイントです。笑
あらん:普通は猫背だもんね。笑
あみ:いっぱい観た人は改めてそこに注目して欲しい。すみちゃんが堂々としててすごい。笑
— いや〜、でも良いMVですよね。
あみ・あべ:気に入ってます!
あべ:結構疲れるMVですよね。笑
すみ:観応えがある。
あべ:長いからね。
あみ:映画っぽくしたくて、これもオマージュなんです。『ゴーストストーリー』っていう映画があって、その影響が強いです。シーツを被ってるお化け…映画を観た時そのフォルムがかわいいなと思って。画面の枠も一緒です。
あみ:で、私の死因がえぐすぎた。自ら選んだんですけど、しんどすぎましたね。川はやばい。笑
一同:笑
あみ:冷たさがなんかもう…レベルが違う。最初は「あ、いけるじゃん」と思ったんだけど、だんだん「本気で死が近づいてるぞ?」って。震えがいつもと違って、「やばいやばい」って。でも監督さんもこだわるタイプの方だから、「あともう1回だけ! もう1回だけ!」って。笑 それがずっと10回くらい続いて。
すみ:川に流れによって変わっちゃうから…。
あみ:そう。流れに身を預けてたから、流れ方が変だと映像にならなくて。何度も繰り返して。笑 なかなか過酷な撮影だったね。でも良いオープニングが録れたかなって思います。ふふふ。
— 監督のカワナさん、良い映像録りますよね。
あみ:すごいですよね。割とユニークなアイデアがある方で、私たちの意見も取り入れてもらいつつ、「じゃあこういうのやってみようか」って楽しんでやってくれるので。すごく毎回やりやすいし楽しんで撮影が出来てるよね。”Be My〜”の時もそうだったし。
新しいアー写とジャケットの撮影
すみ:アー写を撮ったのは6月か。
あみ:ジャケ写も。”ghost”も”tip〜”もアー写も、全部マスダさんに撮ってもらいました。ジャケットは、自分の中で「こういうジャケットにしたい」っていうのがあったので、それをフィルムで撮ってもらって。マスダさんらしさも出て、私たちらしくもあり。
— 素晴らしいと思います。
あみ:ジャケット気に入ってるんですよ。
すみ:アー写は撮り直したいっていうのがあって。
あみ:結構バッチバチにメイクしたよね。
すみ:Warpaintを参考に。
あみ:がっつりメイクしてもらって。
すみ:それをメイさん(Mei Ando)っていう…”tip〜”のメイクもしてもらった方なんですけど、3人(あみ・あべ・あらん)の高校の同級生で。
— 攻めてるなと思いました。僕はめっちゃ好きです。
あみ:前のアー写が結構フィルム系でそんなに顔が見えなくて…。4人それぞれキャラクターがはっきりしてるから、もっとそこの主張をしても良いんじゃないかと思って、「顔!!!!」っていう感じで撮ってもらったアー写です。
3週連続ライブ
すみ:7月は3週連続ライブがあった。
あみ:そうだ…。
すみ:1週目がウメさん(ume-rock)で、2週目がクワタさん(クワタナオノリ)の西永福JAMの日で…。
あみ:JAMの日にコンさんに(PAを)やってもらったんだよね。
— plumsとの対バン。
すみ:plums…北海道の怪物。
— 笑
すみ:主にヴォーカルだけなんだけど。笑 小樽の怪物。で、3週目が(北浦和)KYARA。
— KYARAってもう…無くなるんですよね。
あみ:今月(1月)末です。だからその7月のライブが最後になってしまって…。予定が色々合わなくて。ね。終わってしまった。
すみ:でも3人は(その最後のライブが)ずっと出たいイベントだったんだよね?
あみ:そう、カラスマ(Color of Smile)。
すみ:RIDDLEっていうバンドがずっと企画してるイベント。
あみ:KYARAの名物企画みたいなのがあって。そこに呼んでもらえたら…。
あみ・あらん:KYARAのバンドとして認められる。
一同:笑
— そんなにハモることなんですね。笑
あみ:テンションがすごい。笑 埼玉でやってた時は、先輩とか後輩とかそういうのがちょっとあったじゃん。
— 序列が。
あべ:かなりありましたね。
あみ:まあでも私たちは全員女子だから、割とかわいがってくれてたとは思うけど。その感じがKYARAもあって。最後の最後にようやく…認めてもらったというのもアレなんだけど…。
あらん:一員として入れてもらえた感じ。
あみ:「おいでよ」って言ってもらえたのがすごく嬉しかった。
あらん:ずっとやってきたからこそ出れたのかなっていう。
あべ:長年の夢っていう感じ。
あらん:叶ったね。
あみ:とにかく、ライブ三昧の月でした。
あらん:あんまりライブ三昧の月って今まで無かったけど、でも結構楽しかった。
すみ:全部楽しいイベントだった。
あらん:ライブすること自体が楽しかったかもしれない。
あみ:そうだね。
— とても良いことですね。
札幌遠征
すみ:9月は北海道行ったね。
あみ:札幌です。
すみ:ライブはあんまり良くなかった。
あみ:難しかったですね。
— 難しかった?
すみ:プレッシャーがすごかった。せっかく「東京からSPOOL来ます!」って感じでやってくれてたから「やらないと」っていうのが逆に空回りした。笑
あみ:まあね、そういうのもあるよね。失敗も今までたくさんしてきたけど。でも、札幌は本当に良いところでした。
— 良いところですよ。(※筆者は札幌出身)
あみ:もっとゆっくりしたかったよね。マジでお寿司美味かった。なごやか亭(※以前筆者がオススメした北海道の回転寿司チェーンの名前)ではないけど。
あみ:なごやか亭に今度は行きたいね。
— 今度一緒に行きましょう。実家の近所にあるので。
あらん:やったー!
あみ:実家行きたいです。
— 来ないでください。
一同:笑
台風と幻のレコ発
すみ:10月は台風でライブが一つ流れた。悔しかった。
— でもcattleとスタジオライブやってましたよね?
あみ:そう、流れちゃったけども、スタジオで…。
— 元々はcattleのレコ発でしたよね。
あらん:やりたかったな〜。
あみ:でもあれはあれでおもしろかったです。意外と観てくれる人がいて。すごい視聴者数だったよね。結構ライブ配信って需要あるのかなって。行けないけど観たいって人とか。後からアーカイヴでも観れるし。
すみ:海外の人も観てくれてたりしてて。
あみ:今年も出来たら良いよね。したいよね。
すみ:したい。
あらん・あべ:やろう!
こん:で、”ghost”のリリースも10月。
すみ:10月18日だったかな。
あみ:特に狙ってなかったんですけど、「お化け」と「ハロウィン」で合わせたんじゃないかっていうくらいタイミングがバッチリでした。10月って結構(季節的に)曖昧じゃないですか。それと音楽の雰囲気がマッチしたのも良かったです。
“tip of a finger” MV制作とレコーディング
すみ:MVは11月の頭に撮ったよね。
あみ:今までで一番サクッと撮れたMVですね。笑 3時間くらいで。
すみ:個別で一人ずつ録って。
あみ:これ、どうでした? 逆に聞くっていう。笑
— 笑 そうですね、やっぱり毛色が違う2曲が2ヶ月連続でリリースされて、MVも全然違って…。
あみ:見せ方も全然違いますよね。これもアー写と同じで、それぞれのキャラクターのピックアップっていう、そっちメインでやりたかったんですよね。
— クールでかっこいい感じですよね。
あみ:そうですね。
こん:ギターも結構サクッと録れたよね。
すみ:確かに一番サクッと録れたかも。
あみ:最後のノイズも気に入ってます。ジザメリ(The Jesus and Mary Chain)っぽいノイズにしたくて。コンさんに「ジザメリのこれなんですよ」って聴かせて、「あ、そう、じゃあやってみれば?」ってなって。笑 「ああそうですか…」って。笑
こん:「ああ、これ、それっぽいね」って。
一同:笑
— 何のコミュニケーションだ。笑
こん:でも、”ghost”とはミックスも変えて。当たり前だけど。”tip〜”はドラムは逆に生々しいくらい前に出したくて。一番最初ドラムから入るから。あとはサビのところで「ジャジャッ、ジャジャッ」っていうところのジャキジャキ感を聴かせたいっていうのはデモの段階からイメージがあって。
あみ:そうですね。パキッとさせたかった。”ghost”が割とフワフワしてて、実体がないイメージだったので、それと対比させたサウンドにしたいっていうのがあって、それが結構出来たかなって思います。気に入ってますね。楽器隊がパキッとしてる分、声が自然と前に出てる感じが出ました。
すみ:ちなみにMVはWarpaintを意識してる。
— かっこいいよね、Warpaint。
“tip of a finger” 楽曲制作背景
あみ:”ghost”を作った後に出来た曲で。それが出来たからこそというか…。”ghost”が内向的で殻にこもってて、「誰も寄るな」みたいな状態だったんですけど、”ghost”が出来たことでそれが浄化されて、スッキリした思いがあって。作品になったことで自分が救われたから。それまでは自分の心とか気持ちでいっぱいいっぱいになってて、周りのことを全然見れてなかったなと思って。でも作り終えた途端「パッ」っと急に周りのことを見れるようなモードになって。その時に作ったんですけど。
— ふむ。
あみ:急にベクトルが変わったんですよね。今までは割と内向的な曲が多くて、どっちかというと自分の曲というか、自分に向けて…自分の内面のことを歌う曲が多かったと思うんですけど、初めて外に発信出来た曲だなと思ってて。割と世間に対しての「怒り」にも似たものがすごく湧いてきて。そこからバーッと書き上げたんですけど。今って、ほとんどみんなスマホで全部…連絡もSNSもそうですけど、全部画面で完結する時代になったじゃないですか。
— そうですよね。
あみ:便利になってしまって。それは良い部分もすごくあると思うんですけど、私としては画面上で完結しすぎてて。本質に触れてない状態で、どんどん情報だけ流れてしまって、みんなそれを疑わずに、何も考えずに飲み込んで。そんな様を見て、嫌になってしまったんですよ。「何なんだろう、この世界は?」みたいな。そう言いつつも、自分も…みんなもそうやって生きてるわけじゃないですか。そこに流されちゃってる部分もあるから、どうしても自分に対しての「警鐘」を鳴らしたいっていうのもあって。…なんて言ったら良いんですかね。
— いや、すごく分かりますよ。
あみ:タイムラインとかって、いろんな人の思いとか気持ちとか、情報もそうですけど、色々だだ漏れじゃないですか。情報過多すぎて、私はもう見てるとテンションが下がってきてしまって。それで…なんだろう。何も考えずに投稿していくのが、「無」になっていく感じの世界というか。それが嫌になってしまって。でもこういう本音みたいなことを書くと、やっぱり「何そんな本気で言っちゃってんの?」みたいになる。今もうネタみたいになってるじゃないですか、SNSが。おもしろいことを言ったもん勝ち。「いいね」をどれだけ獲得できるか…っていう大喜利みたいな世界になっちゃってるのがどうしても嫌で…。なんでしょうね、うん。
— 僕もほとんど同じ気持ちなので分かります。みんな何の疑問も抱かずに…すごいなって。
あみ:そうそうそう。そのまま与えられたものをただ…。「みんながやってるから」という理由でみんなやってるじゃないですか。反射ですよね。反射的にただ受け入れて。何も考えずにやってるっていう、その仕組み自体を私は嫌になってしまって。その怒りみたいなものから生まれた曲。その流れた情報をみんな疑わずに信じてるっていう、その状態もすごい嫌で。
— うんうん。
あみ:判断能力みたいなのが無いのかなって。みんな、そのまま飲み込んで。
— 鈍ってますよね。
あみ:鈍っちゃってて、それすら気づいてないっていう感じじゃないですか。自分はそうなりたくない…でもそう言いながらも周りがほとんどの人がそういう状態で生きているのを見ると、どうしても流されてしまうし。でもちゃんと判断して、「これは食べる」「これは食べない」って決めないと、どんどん流されてしまって、自分の意思を失ってしまうんじゃないかって思って、怖くなっちゃったんですよね。そういう意味で、自分自身に対しても書いた曲だし、周りにも言ってるっていう。自分的には新境地なんですよね。初めて周りに何か攻撃したって感じ。
— 攻撃!
あみ:そう、攻撃ですね。
— やっぱり、”ghost”が出来たからこそ、そういうモードに入ったっていうのが分かりますね。一旦リセットされたというか。
あみ:そう。削ぎ落とされて肉体だけ残って、だからこそ周りの状態が鮮明に見えて。「こういう風にはなりたくないな」って思って出来た曲ですね。
— いやあ…共感しかないです。
あみ:おすしさんのnoteも結構そういうことを書いてて。ちゃんと自分のページを作って、そこの世界で自分の言葉で確立してる姿を見ると、私もここで落ち込んでられないなというか、やっぱり発信しないと。発信しない限りには周りには伝わらないし。結局そこで黙ってたら言ってないのと一緒だから。それは良くないなと思って、私も今年からnoteを始めようと思って。「もっと言いたいことを言おう」って。でもTwitterで言うのは違うから、自分の世界を作って、自分の国で、自分の言葉で書くっていうのが、私には合ってるなと思って。
— この話は…大袈裟かもしれないですけど、”tip〜”を含め、新しい時代を創る原動力になるんじゃないかなっていう気がしますね。すごく。
あみ:そう受け取って欲しいですよね。そんなにメッセージ性があるっていうわけではないんだけど、やっぱり誰かに刺さる言葉を発していきたいし、今までは自分のために歌ってた曲が多かったんですけど、もっと周りに対して発信していきたいですね。
— じゃあ、これからどんどん変わっていくかもしれないですよね。曲の感じとかも。
あみ:変わると思います。
— 今まで「自分のため」だけだったものが徐々に「誰かのため」になり始めてて。”tip〜”は新しい突破口というか。
あみ:そんな感じです、本当に。
ー 次のアルバムが出るとして、全然違うものが出来そうだなっていう。
あみ:どんどん変わってますね。ある意味「地上」に出たからこそ見えた世界だったから。今まではこもってたけど、初めて外界に出てビーム出したみたいな。笑 自分としては大きな一歩です。もっと「刺す曲」をどんどん作りたいと思います。攻撃していきます、今年は。
台湾遠征
すみ:これもコンさんと一緒に行った。
あみ:2019年はすごいですね。割と一緒にいますね。
こん:2年ぶりの台湾。前回も俺は一緒だったんだよね。俺はmagic loveとして行ってて。会場も同じ(台北Revolver)。その時はbroken little sisterとcattleとSPOOLとmagic loveの4バンド。その時SPOOLと一緒にやってなかったら多分『SPOOL』は出来てない。
あみ:そうだね。
こん:台湾から帰ってきて、日本で打ち上げ兼新年会をやった時に、「自主制作でアルバムを作ろうと思ってるんです」っていう話を聞いて。「いや俺録るし、全国流通しようよ!」ってぬーひーさんと一緒に言って。
あみ:そうそう。そこで結託して。
こん:結託。笑 悪だくみみたいだな。笑
一同:爆笑
あみ:ごめん。結託は違う。笑
こん:まあ、だからそういう経緯でレコーディングすることになったから…。
あべ:台湾のおかげですよね。
— じゃあ、「恩返し」じゃないですけど…。
あみ:また企画して「行こう」ってなって。実現しました。
すみ:人がいっぱい来てくれて嬉しかった。
こん:でも大変だったね。回線表が届いてなかったり…。
すみ:マイクが逆になってたり。
こん:本番始まったら、なぜか知らないけどキックとスネアのマイクが逆になってて。キックはすごいペチペチいってるしスネアはパシャパシャいってデカいし…みたいな。笑 PA席が奥まってたせいで前に出ないと音が分からないようなところで、最初は分からなくて。ちょっと前出たら「どういうことだこれは?!」ってなって。笑 すぐに戻ったら「逆じゃねえか!」ってなって。
あべ:すごいな。
あみ:振り返ると色々…変わったところで沢山やったなって。
— それにしても、こうして振り返るとめっちゃ活動してますよね。
あべ:充実した1年でしたね。
2020年の話
— さて、1年振り返って、どうでした?
あみ:濃ゆいですよね。濃ゆかったね〜。でもなんか、大事な1年でしたよね。みんなよく頑張ったよね。笑
一同:笑
あみ:みんなすごい頑張ってくれた。みんな。いろんな人の協力で今があるっていうのは、月並みですけど。それがないとやっぱり出来ないっていうのは感じて。
— それを実感できるっていうのは、やっぱりすごく良いことですよね。
あみ:あんまり「ありがとう、ありがとう」って言うのもアレなんですけど、本当にそれが本心で。来年もね…。
— 来年じゃないですよ。笑
一同:笑
あみ:まだ2019年から抜け出せない。笑
こん:年越せてない。笑
— 今年のSPOOLはどうなっていくのでしょうね。
あみ:今年は…どうしたいですか、みんな。
あべ:東京2020。
すみ:オリンピック。
あらん:え〜、なんだろう…。ついて行きます。笑
一同:笑
あみ:シンプルだ。
— リリースの予定というか、目論みみたいなのは…?
あみ:目論みは…あります。何かを出します。待っててください。
— おっ…!!!
あべ:2020年中には必ず。
こん:頑張ってください。他人事。
— 他人事…じゃないと思われますが。笑
一同:笑
— この2019年の大いなる飛躍をそのまま…この勢いで、やっていって欲しいなっていう気持ちがあるんですよ。僕が言うのもアレなんですけど。
あべ:ありがとうございます! なんか…あらんがさっき「ついて行きます」って言ったのと私も同じ気持ちで。3月末に”ghost”のデモをもらった時、完全に私はアルバムを出し終わった解放感で浮かれてたというか。笑 「終わった終わった!」っていう。アルバムを出した余韻に浸ってて。でも、その時に”ghost”のデモを送ってもらって、なんというか…「あみちゃんってやっぱり違う次元にいるんだな」ってすごい思ったんですよ。なので、あみちゃんに従うしかないなって。笑
一同:笑
あみ:絶対王政。笑
あべ:今までは「SPOOL=みんな一緒」って感じだったんですけど、やっぱりあみちゃんの次元が違うっていうのを”ghost”で実感したので、これからはあみちゃんがやりたいようにやることが、自分のやりたいことであり…そういう気持ちです。
— それってすごいことですよね。バンド内でフロントマンとの意識の差が生まれたりとかって、普通にある話だと思うんですけど、そうならないのがすごいなって。そういう関係性ってすごい貴重というか。
あべ:なんと言うか…フロントマンとそれ以外のメンバーが同じ気持ちになれるかって言われたら、自分が前までは実際にそうじゃなかった。だから、私も今までの自分とは違うなって感じです。
すみ:私も似てるんだけど…あみさんがやりたいこととか、SPOOLで出したいものを具現化するために、プレイヤーとして成長すべきかなって。やっと勝手が分かってきて。バンドのギターってこうなんだ、みたいな。だから、それをどう活かせるかっていうので、バンドの将来にも関わってくるかなっていう感じ。だから、頑張りたい!
— すみちゃんは本当に…僕がこんなことを言うのもアレだけど、本当に様になってきたというか。ちゃんと「バンドマン」っていう。
あみ:そうだよね。「バンド」になった。
— 本当に「4人のバンド」になりましたよね。…正直、僕は3人時代を知らないんですけど。笑
一同:笑
— でも、ずっと観てて分かりますもん、感じるものはあります。
あみ:うん。良いですね。
— 今すごく良い状態ですよね。
あみ:無敵状態です。ふふふ。突っ走って行きます。
— 他に何か、言っておきたいことはありますか?
こん:言いたいこと…? 仕事くれ!
一同:笑
こん:みんながやりたいことをやれるように、またやっていくだけなんで。みんなの実力がそのまま反映されるようなPAを目指していくので、みなさん頑張ってください。
あみ・あべ:はい!
Live Photo
2019/06/23 Total Feedback @高円寺HIGH
photo by Yusuke Masuda
2019/09/11 “mimesis” @新代田FEVER
photo by Yusuke Masuda
SPOOL are(L→R)
安倍美奈子(Ba.)
aran(Dr.)
こばやしあゆみ(Vo. G.)
ショウジスミカ(G.)