■ Label – MERZ
■ Release – 2014/10/15
THE NOVEMBERSによる、5枚目のフルアルバム。
今作は彼らの数あるレパートリーの中でも、とりわけノイズ・ミュージックに傾倒したアルバムとなっている。それを象徴するのは、冒頭からドラムレスのドローン・ミュージックを展開し、外部を遮断する膜のようなサウンドで聴く者を包み込む「救世なき巣」(元ネタは現代音楽家のヤニス・クセナキス)だ。その後も、破壊的な衝動に満ちた「Sturm und Drang」や「Blood Music.1985」など、聴覚を埋め尽くすノイズ・ギターと重厚感のあるリズム隊で、バンドが理想とする「美しさ」を妥協なく追求している。
作品の全体的なリファレンスとしては、灰野敬二やBoris、裸のラリーズ、My Bloody Valentineなどを挙げることができるだろう。特に今作は、2013年9月30日に行われたMBVの東京国際フォーラム公演に音響面で影響を受けているという。波のようにうねるギターがMBVを彷彿とさせる表題曲「Rhapsody in beauty」は、ケヴィン・シールズが目指す「デザインされた轟音」を最も体現していると言えそうだ。
それだけに、轟音に満ちた「236745881」で浮かび上がるように聴こえるハープの音色は束の間の安息の作用をもたらし、ノイズの呪縛から突如として放り出される「tu m’(Parallel Ver,)」やエレガントな「Romancé」(読み方は「ロマンセ」)がもたらすチルアウト的な心地良さは特に際立ってくる。そして、弾き語りで幕を閉じる「僕らはなんだったんだろう」で訪れるカタルシスには、きっと肩を震わせずにはいられないはずだ。誰かがその一生を終える時、人生にどのような意味があったのか、明確な答えを出せる人などいない──という諦念。その無情さに打ちひしがれる人間の姿は、どうして美しいのだろう。
文=對馬拓