■ この4人で作って、その化学反応が楽しいから、それを追求してる感じ
對馬:時勢的にリモートでのやりとりが増えたと思いますが、レコーディングはどのように進みましたか? ミックスやマスタリングの面でこだわった点などもあれば聞かせてください。
Miraco:レコーディングは集まったけど、曲作りはリモートだったよね。ミックスはいつもの荻野さんにお願いして。今回はヴォーカルが前に出てたりとか、「An Atrium」みたいにいつもの揺らぎと違うアプローチだったりとか、そういう点はこだわったかな。あと、今回はマスタリングとミックスのスタジオが違ってて。マスタリングは関大前の「パレット」っていうスタジオでやったんですけど、「これを通したら音が良い」っていう機械を使ったりとか、スタジオを変えたりして工夫はしました。ドラムのスネアも変えたり。
Yusei:みんなやってることだとは思いますけど、スネアは曲によって変えましたね。
Uji:サポートに入ってすぐアルバムを作りましょう、っていう時期にコロナが重なって、リモートでDAWとかデモのやりとりをしてたんですけど、揺らぎは曲の空気感だったり、展開や音の鳴り方をすごく意識するバンドなので、やっぱりスタジオでアナログ的に全員でがっつり音出して…っていう作業じゃないとまとまった曲作りができなくて。僕はなんとなく「リモートで出来上がっていくのかな」と思ってたんですけど、最終的にはアナログで作り込んだっていうのが、このバンドならではだと思いましたね。
Miraco:やっぱりリモートの曲作りは慣れてなくて。「曲の種を作る」っていう部分でやってみたりしたけど苦労した。
Kantaro:自分たちのアイデアだけじゃなくて、荻野さんのエンジニアとしての意見を前作よりもたくさん聞いたかな。荻野さんは聴いてる音楽とか良いと思う作品が自分たちと近いから、「ここはどう思います?」とか「ここに何を足したらいいと思います?」とか、そういうやりとりは多かったです。
Miraco:「An Atrium」とか「While The Sand’s Over」は特にそういうのが多かった。
Kantaro:あと、ベースが前作より目立ってる感じはしてて。前作のベースは、もちろん調整はしてましたけど、「この曲はこうして」っていうのはそこまでなくて。でも今作は「ここの部分はもっとソリッドな音で」とか「もっとガツガツした音で」とか「ここだけベースは持ち上げて」とか、そういう話は結構しました。自分たちからすれば1つ武器が増えたみたいな感覚。
Miraco:Ujiくんは耳がすごく良いし、自分の音もすごい気にしてくれるから、こっちから注文できる部分も多かったし。
Yusei:やっぱり、レコーディング中も特に「シューゲイザー」っていうことには重きを置いてなかったよね。
Kantaro:ベースのリファレンスがメタル寄りだったりしましたもんね。
Uji:そうだね。
Kantaro:ポップパンク系のベースが良いって言ったら、それをちゃんと再現してくれたりとか。
對馬:やっぱりそういう話を聞くと、以前から「そもそもシューゲイザーをやろうとは思ってない」という旨のことを言っていたのを思い出しますね。そのマインドは変わらないですか?
Miraco:前身のバンドから「揺らぎ」に名前が変わって、その時にYuseiさんがドラムとして入ってきて。それでバンドの方向性を決める時、私がちょうどシューゲイザーにハマってて、「こういう音像でやれたら良いな」って思ってたら、Yuseiさんも「こういうサウンドでやってみたかった」って話になって。それでシューゲイザーを参考にしてたから、今もその名残りがある感じ。まあ「空間づくり」だね。
Kantaro:その考え方みたいなのは多分変わってなくて。(揺らぎのサウンド面の特徴である)「壮大な感じ」っていうのは、我々がシューゲイザーとか北欧のポストロックから学んで反映させてるとは思うけど、シューゲイザー的なアプローチじゃなくて他の方法で壮大さを出したいね、っていう気持ちはあるかな。みんな口にはしてないですけど。
Miraco:私としてはこの4人で作って、その化学反応が楽しいから、それを追求してる感じが強いかな。そのためにずっと作り続けてるのかもしれない。それがバンド…なのかな? 分からん。笑
Kantaro:アプローチの一つにシューゲイザーがあるとは思うけど、前作のリリース後からみんな色々な音楽を聴いてきたし、好みも変わったし。
對馬:うちのメディア的には「シューゲイザー・バンド」と呼ぶことが多いんですけど、そのマインドは汲み取りたいからあくまで「便宜上」ではあって。
Miraco:そこは便宜上、仕方ないとは思ってる。
Kantaro:そこは乗っからせてもらいたい。笑
Miraco:ある意味「ニッチな産業」なので、ファンが掴めるなら、そこで変に尖った思考にはならないかな。
Yusei:別にシューゲイザーをやってない訳ではないからな。
Miraco:一応、やらせてもらってますから。
Yusei:意識してやってるわけではない。内なるものが自然と出てきてる。
Miraco:シューゲイザーをかじったことのあるバンドがどう進化していくか--自分たち自身のことでもあるけど、私は楽しみかな。シューゲイザーを通らせてもらった身として。
■ 良い写真が多すぎて選びきれなくて
對馬:今作も前作に引き続き、FLAKE SOUNDSからリリースされましたね。
Miraco:今回も出させていただいて。あと、前回もですけど《FRIENDSHIP.》っていうディストリビューターにも協力してもらってて、プロモーションとか色々すごい助けてもらってる。ありがたいですね。こんなインディーでニッチなバンドだけど、環境にも恵まれてて。Spotifyのリスナーも、今は毎月4万人くらいいるのかな。ずっとリリースしてなかったけど、リスナー数も再生数もどんどん右肩上がりで。
對馬:マジですか。すごいですね…!
Miraco:そういう地盤を築いてもらってて、ほんとに感謝だなと思います。
Kantaro:(アルバムのリリース前は)今年の3月が今までで一番Spotifyの再生数が多かった。
Uji:へ〜! …へ〜とか言って。
一同:笑
Kantaro:今はアルバムが出たから更新されましたけど、先行シングルを出すまではそうでした。
Miraco:(データを見ると)『nightlife』はアメリカの再生数がダントツで。Spotifyはアメリカが強くて、Apple Musicは日本が強いのかな。そういう棲み分けも面白いです。
對馬:今回のアートワークとアーティスト写真は、カネコアヤノや『愛がなんだ』のスチール写真などでも著名な木村和平氏が手がけていますが、関わるに至るまでどういう経緯があったのでしょうか。
photo by Kazuhei Kimura
Miraco:2〜3年くらい前に、突然メールをいただいたんですよ。素晴らしい写真を撮ってるカメラマンの方なので、びっくりして。それで、前作リリース後のライブにも来ていただいて、そこで初めてお会いして。そこから特に交流はなかったんですけど、今回のジャケットをどうしようか考えた時に、カメラマンは木村さんにお願いして、アー写とジャケ写を撮ってもらおう、っていう流れになって。デザインは友達でもあるFaded Old CityのYasuくんにお願いして、木村さんが撮った写真を使わせていただいて、ジャケットとかパッケージをデザインしてもらいました。
對馬:シングルも含め、素晴らしいジャケットですよね…。
『For you, Adroit it but soft』ジャケット
「Underneath It All」ジャケット
「While My Waves Wonder」ジャケット
Miraco:良い写真が多すぎて選びきれなくて。笑
Kantaro:撮影も楽しかったしね。
Miraco:東京の奥多摩に撮りに行ったんですよ。トンネルとか川沿いとかいろんな場所で撮って。すごく楽しくて良い撮影でした。
photo by Kazuhei Kimura
對馬:そして、CDのパッケージは今回もデジパックですね。
Miraco:です。フィジカルとしてこだわった部分は歌詞カードで、前作みたいに曲ごとにバラで入れてます。
對馬:あとやっぱり、前作の時も言いましたが、アナログで出してほしいなあ…。
一同:笑
Kantaro:私たちも「ほしいなあ…」です。笑
Yusei:ほしいなあ。
Miraco:ほしいねえ。まあ、今後にご期待ください。
對馬:できれば前作と合わせて…!
Yusei:出せたら良いねえ。
photo by Kazuhei Kimura
【 Next 】 「スロウコアとか合いそう」みたいなことを結構言われて